春の高校入試の概況

推薦試験

①文化・スポーツ等特別推薦
 文化・スポーツ等特別推薦の応募倍率は、前年度(1.96倍)を下回る1.75倍で、2004年度に特別推薦が導入されてから最も低い倍率を記録しました。
 コロナ禍によって推薦基準に「大会の実績や資格等に関わる内容」を含めないとしたことから、志望者は増加するのではとの見方もありましたが、逆に応募者は前年度より300人(15.3%)減りました。中学校の休業や分散登校などによって十分な活動ができなかったことが影響したのかもしれません。

②一般推薦
 一般推薦の応募倍率は2.78倍で、2015年度以降下がり続けていた倍率が上昇に転じました。普通科のみならず、工業科、農業科、家庭科、産業科など多くの学科で前年度より倍率が上がっています。検査項目から集団討論がなくなったことや、検査日がほとんどの学校で2日間から1日へと短縮されるなど検査の負担が軽減されたことが原因と思われます。
 男女別募集の普通科で最も高い倍率になったのは、男女とも青山で男子は6.14倍、女子は9.77倍でした。男子は次いで城東5.75倍、足立西5.05倍、片倉4.90倍、三田4.85倍の順、女子は三田7.50倍、板橋6.77倍、広尾6.42倍、城東6.23倍と続いています。単位制普通科は新宿が4.59倍で上水の5.33倍に抜かれ、8年ぶりにトップの座を明け渡しました。専門学科では、新設の赤羽北桜「調理」が7.60倍となり、それまで毎年トップであった総合芸術「舞台表現」(5.83倍)を2位に追いやりました。次いで総合芸術「美術」5.33倍、園芸「動物」5.10倍、赤羽北桜「介護福祉」5.00倍となり、赤羽北桜がベスト5に2学科入りました。

学力検査(第一次募集・分割前期募集)

①全体的な傾向
 学力検査の最終的な応募倍率は1.35倍で、今の入試制度になった1994年度以降で過去最低だった2019、2020年度の1.40倍をさらに下回りました。1.3倍台も初めてのことです。コロナ禍による経済不況を予想し、リーマンショック当時のように都立志向の復活を予想する向きもありましたが、逆に大幅な倍率ダウンになりました。中学校の休業によって思うように学習に取り組めなかったこと、模擬テストが自宅受検となったことにより、5教科の検査を行う都立高入試に不安が生じ、学力検査のない内申中心の私立推薦入試や学力を問わない通信制高校に流れたのではないかと思われます。
 男女別募集の普通科男子の倍率は1.43倍で前年度(1.49倍)よりダウン、女子も1.48倍で前年度(1.53倍)より下がっています。単位制普通科は前年度1.34倍から今回1.38倍と上昇しましたが、11校中4校が定員割れになっています。専門学科では商業科(0.83倍)と工業科(0.91倍)が1倍を割ったほか他学科も低調で、専門学科全体としては1.04倍と過去最低倍率を年々更新しています。また、昼間定時制の1.02倍とチャレンジスクールの1.18倍も近年にない低倍率で、通信制高校への流出を窺わせています。

②高倍率だった高校
 男女別普通科で最も高い倍率になったのは、男子は日比谷で2.25倍でした。これは日比谷からすると低倍率で、2年連続で応募者数が300人を割っており、高難度が敬遠されているのではないかと思われます。女子の最高倍率は今年度も三田で2.99倍でした。小山台をはじめ国際や新宿からの移動があったようです。16年連続で応募倍率は2倍を超えていますが、2.9倍台まで上がったのは初めてのことです。男子は次いで戸山2.19倍、三田2.07倍、田園調布2.05倍、石神井と青山が2.01倍、女子は青山2.44倍、広尾2.34倍、上野2.22倍、田園調布2.16倍という順でした。青山の2.4倍台は過去に例のないような高倍率で、日比谷と戸山の減少分を受け入れたような形です。上野も人気校で伸びてきている学校です。2020年度春の大学合格実績も好調だったため高い倍率になりました。

③他の高校について
 その他の高校についてみていくと、両国の女子(1.10倍)は隔年現象による倍率ダウンで、ここは2022年度より高校募集が停止されますが、その影響は安定した人気を得ている小松川に及びそうです。城東は人気校で男女とも高倍率入試(男子1.89倍、女子1.97倍)が続きます。2022年度にはグラウンドの整備が終わり、全ての施設が新しくなります。文京は人気校ですが応募倍率は下降傾向です(2018年度から順に、男子1.91→1.60→1.34→1.30倍、女子2.11→1.79→1.73→1.50倍)。竹早、北園と文京は旧第4学区の人気校で毎年高い倍率でしたが、私立志向が高まったことで倍率が下がりだしていました。今年度は竹早と北園は倍率が回復しましたが、文京は上がりませんでした。私立・通信制志向の波が学力中堅層まで及んできた結果なのかもしれません。江戸川は男女とも倍率ダウンでした。男子も1.76倍は2年連続のダウン、女子の1.39倍は9年ぶりの1.3倍台です。小岩の男子(1.55倍)は6年ぶりに1.6倍を下回りました。在籍の約8割を占める地元(江戸川区・葛飾区)の中3生が約200人減少しているという影響もあるとは思いますが、私立に向かった可能性もあります。葛飾野の女子(0.94倍)は前年度(0.89倍)よりは上がったものの、2年連続で定員割れから抜け出せませんでした。周辺私立高への流出が続いているようです。